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2009-04-21

「この自由な世界で」&「Sweet Sixteen」

 少し前の話になりますが ケン ローチ監督の映画を2本立てで見ました 最新作と2002年製作、ロンドンとスコットランド(恐らくグラスゴーの郊外)、そして主人公はシングルマザーと16歳の誕生日を明日に控えた少年と 設定の違いは多々あれど この2作品にはかなりの共通テーマが見られ それがまた監督の人間を そして社会を見つめる視点となっているのかなと考えさせられて いい組み合わせの2本立てでした(映画館の支配人さんに乾杯!)

        img_1029955_16224392_1.jpg
     (この写真は blogs.yahoo.co.jp/matu153cm/archive/2008/09/03より)

 まず双方とも題名がいい!「この自由な世界で」(原題は「It's a free world。。。」)は ロンドンで働くシングル マザー アンジーが東欧からの移民労働者専門の派遣会社を些細なこと(セクハラを受け それに毅然と立ち向かったこと)で首になり 何とかカード借金地獄から抜け出し(イギリスのクレジットカードは 毎月決められた最低金額さえ払えば残りの残高を返済しなくとも 利子は付かない仕組みなので うっかりすると雪達磨式にカード借金が増えます 個人的にこのシステムは大嫌いでした)小学生の息子と再び暮らせることを夢見て(彼女はフルタイムで働いているためか?息子を近所の自分の両親に預けて 自分は友達とフラットをシェアして暮らしています)自ら移民労働者派遣の会社を立ち上げます 
 事はそんなに簡単には行かないよ 無茶をするなという知り合いの忠告も聞かず 親友と始めた派遣会社 まずは順調な滑り出しを見せたかのようですが 違法在者のイラン人につい同情心から仕事を紹介したことから 歯車が少しずつ狂い始めるのです 不法移民に偽造パスポートを与え 仕事を斡旋するのは勿論法律違反 見つかれば禁固5年以上の刑罰です しかし顧客からの要求にもっと応えようと そして不渡りの小切手を掴まされた損を取り戻そうと 彼女の行動はエスカレート 仕舞いには 自分が探してきた45人ものウクライナ人労働者の住まいを確保するため 何と先のイラン人とその家族がこっそり隠れている不法移民達の隠れ家を 警察に密告してしまいます これには今までアンジーに協力してきた親友も堪忍袋の緒が切れ 彼女を見放します 何かと手を貸してくれた親切なポーランドの若者も国へ帰る決心をし 両親は彼女のやっていることにただ呆れるばかり そして遂に決定的なことが起こり。。。。
                       sweet_sixteen.jpg
   (この写真はwww.impawards.com/2003/sweet_sixteen.htmlより)
                     
 一方の「Sweet Sixteen」 こちらも随分皮肉な 悲しいタイトルです 主人公リアムの母は やくざのボーイフレンドの為に刑務所暮らし リアムは母に そんなやくざな男と別れて何とか幸せに2人で暮らせるよう 郊外にバンガローを買うことを夢みます そのためにはお金が欲しい タバコの密売位ではらちが開かないと思った彼は 親友と母のボーイフレンドから麻薬を盗み それを売ろうとします その様子を見た 麻薬売人のボスが彼の腕を見込んで彼を子分にし その後の彼の働き振りを認めて 素敵なフラットまで提供してくれます 意気揚々と 刑を終えた母を迎えに行ったリアム しかしその後 彼を襲った 全く予期せぬ出来事は 彼の運命を完全に狂わせてしまいます   
 ラストシーン 警察に追われる身となったリアムが海岸で 姉からの悲痛な電話を受けます「何てことなの 何て悲しいことなの 今日はあなたの16歳の誕生日なのに。。。」

 両作品とも非常にリアルなタッチで まるでドキュメンタリーを見ているように 俳優たちは自分の役を生きています 詳しいことは分かりませんが もしかしたら彼らは過去に似たような境遇に自分の身を置いていたのではないか??そんな風にも錯覚させられるほどです
 そして 扱っているテーマは 双方とも今日の英国が抱えている大きな社会問題を含み 大変重たいものばかりです 不法就労者と彼らを利用する人々、麻薬、青少年の犯罪及び劣悪な家庭環境等 枚挙に暇がありません
 けれども 私が一番面白いと思ったのは 双方の作品とも主人公達が あまりにも1つのことに囚われ過ぎてしまい 周りが見えず 従って正しい判断が下せないばかりに 自分の人生を読み間違え 誤った方向に踏み出してしまった その過程でした 例えばアンジーはお金を稼いで今の生活から抜け出し もっといい暮らしがしたいと思うばかりに この自由競争社会では何でもできると仕事の手を広げた結果 掴まされた不渡小切手のため 賃金を払うことが出来なかった労働者から 息子の命まで狙われる羽目になります そして映画は 彼らに払うお金を稼ぐため さらに安い労働力を求め ウクライナで労働者と面接をしているところで終わっています 彼女のなりふり構わないやり方に呆れ 本当に彼女にとって必要だった人々は 皆彼女から去ってしまいました 彼女が搾取される側(雇用されるが 一方的に解雇される側)から ほんの少しだけ搾取する側に回ったとき その代償に彼女は何かを失ったのです しかし彼女も所詮 さらに大きなパワー 経済力を持っている者(顧客)から使われる(搾取される)身でしかなかったのです
 一方のリアムは 母親と2人で暮らす そのことだけを切に願いすぎていたため 母親が本当に何を望んでいたのか どんな人間なのか見ようとはしませんでした 15,6歳の少年に理解しろと言う方が難しすぎることかもしれませんが 母親が実はどんなな仕打ちを受けても やくざなボーイフレンドから決して離れようとはしないことを 年がそれ程違わない姉は冷静に見抜いています しかしリアムはそんな母の態度が信じられず 早く母の呪縛から逃れて欲しいと 本当にリアムのことを思う姉に逆に罵詈雑言を浴びせますが ついに現実(母が自分ではなく ボーイフレンドと暮らすことを選択したこと)を見せ付けられ とうとう母のボーイフレンドを刺してしまうのです なんという結末。。。彼は 母と暮らす事を夢見た家を手に入れるため 無二の親友までも失くしたというのに。。。
 私は1年間だけ イギリスの片田舎の農業地帯に住んだ事があります そこは英国中の野菜の2、30%を供給する 一大野菜産地でした そしてその地域では 当時数多くの東欧移民が農家に雇われていました 彼らは1軒の家に15人程で住まわされ(何と庭の納屋にも住んでいました!)朝から晩まで 腰をかがめ 畑でキャベツなどを収穫していました そして その地域では急速に移民が増えたため 地元民との対立も起こり また社会保険などの急速な増大(英国ではEU市民ならば 医療も無料 失業すれば失業保険や住宅手当も請求できます)が地域経済を圧迫し始め 社会問題に為りつつありました 彼らも「この自由な社会で。。」の様に 派遣会社から斡旋し送り込まれてきた人達だったのかもしれません そして 英国経済も世界同時不況の影響を受け 急速に減退している今 一体彼らはどうなっているのでしょう。。。いや 似たような話はイギリスだけでなく 日本にも世界中に溢れているに違いありません   
 
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こんにちは~。「Sweet Sixteen」のほうはずいぶん前に観ました。でも詳しい内容を忘れてしまいました。つらいくらい映画だったような記憶が。。。Kazueさんの解説で、少し思い出しました。そこまで「母親」のことを思う子供の心が痛々しいですね。そのあたり、「蜜の味」にも少し似ていますね。sweet sixteen という言葉が欧米にあるというのはこのとき知りました。日本では16歳より17歳のほうがクローズアップされているような気がするので、欧米の歌にもよくsixteen という言葉が出てくるのは新鮮な驚きでした。

Re:  

June様> お元気ですか~。「Sweet Sixteen」ご覧になっていたのですね 確かに辛い映画ですが それと同時に良く練られたストーリーだなあと 夫も私も感心しました 監督はどうやってこういう話を思いつくのでしょうねえ しかしケン ローチの映画は国内では余り受けがよくないそうです まあその理由も 分かる気がしますが。。。
 「sweet sixteen」 という歌もありましたよね 50、60年代位のアメリカンポップスでしたか。。。16歳は現在のイギリスの教育制度だと 義務教育が終わる年なので(少し前は15歳だったそうですが)高等教育に進まない子はそのまま社会に出ることになるので そういう意味でも 人生の1区切りって感じなのでしょうね アメリカはどうなのかなあ??
 話は変わりますが 最近お忙しそうですね 講座の後のお茶歓談(私はこれをとても楽しみにしています)またお時間があればいらしてくださいねー 寂しいですよー お待ちしてまーす 
プロフィール

Kazue イギリス人の夫と6年余りの英国、スペイン生活を経て 2008年夏 日本へ帰国

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